その店の名前を
飛車角(仮名)としておこう。
今を去る40年も前、オレが中学生の頃、先輩に連れられて
飛車角(仮名)を訪れた。
とある駅に繋がっている商店街を一歩外れた路地裏にある薄汚い店だった。
カウンター席が15席くらいと4人掛けのテーブルが1卓あるだけだ。
店に入ると「いらっしゃい!」の声と同時に座る席を指定されてしまう。
メニューは餃子だけで2人前以上しか受け付けない。
ちなみに1人前は6個である。
注文して待っている間に、置いてある小皿を取ってそこにラー油と酢醤油を入れて待つのだが、ラー油だけを入れるのではなく、ラー油の入っている金属カップの底に溜まっている唐辛子をたんまりと小皿に載せるのだ。
餃子が出来上がってくる。
まずは割り箸を割って餃子をひとつ摘まみ、小皿に溜まっている唐辛子を挟むようにして掬い上げ口に放り込む。
ラー油の辛さと酢醤油の味を感じると同時に餃子の皮の美味しさと具のジューシーさが押し寄せてくる。
と・・・ドカンと唐辛子がやってくるのだ!
いきなり汗腺が全開になり汗が噴き出してくる。
この感覚が気持ちいいのである ♪♪
しかし、唐辛子に慣れていないと大変なことになる。
唐辛子初心者の後輩を連れて行き、この食べ方を伝授したのだが、翌日学校で彼はこう語った。
「朝、目が覚めるといきなりトイレに直行したんですよ。それからはずっとお尻(肛門)がヒリヒリしてます。で、学校に来るまで乗り換え駅すべてでトイレに行って(排便)・・・。今でもお尻痛いです(涙)」
無理をしてはいけない(笑)
ここの店では10人前を30分で食べると料金がタダになった。
つわものの中にはクリアできたヤツがいたが、オレは6人前注文してあと3個が食べることができずに残してしまった。
注文した餃子を食べ終わると、店員はさっさと皿を引き、「ありがとうございましたぁー」と言って席を立たせるのである。
支払は、絶対にひとりずつではなく一緒に店に入ったものの合計で支払わされるのだ。
だから、店を出てから友達と清算する。
こんな店でも行列ができるときがあった。
それほど美味しかった。
支店ができて他の店にも行ってみたが、行き慣れた店の味がいちばん美味しかった。
夕方、餃子を食べて帰った日の晩、オレがお風呂から上がったあとに親父が入った。
と・・・・
親父「おーーーい!ガス漏れしてるんと違うか?」
と言って風呂場から素っ裸で飛んで出てきた。
調べてみるとガス漏れではなく、その原因はオレの食べて帰って来た餃子のニンニクの匂いだった。
大学は府外に行ったので
飛車角(仮名)に行くことは無くなったし、社会人になってからは営業職だったので餃子すら食べることもなく、年月が流れた。
とある休日、ふと目に付いた
飛車角(仮名)。
駐車場は無いけれど会社からほど近く、食べに行ってみた。
飛車角(仮名)とよく似た名前の
桂馬(仮名)はすでに中華レストランになっていて駐車場も完備していたし、餃子の美味しい店として宣伝していたのであるが、納得はできなかった。
会社のほど近くの
飛車角(仮名)は違った。
まず、ラー油の底に唐辛子がたっぷりと沈んでいる。
出てきた餃子はパリッと焼けていて具がジューシーで美味しい。
それを餃子のタレとラー油につけて、唐辛子をしっかりとまぶして食べると昔の味が蘇ったのである。
美味しいーー!
それ以来、毎週のように通って食べていた。
が、広島への引っ越しで食べることができなくなってしまったのだ。
その
飛車角(仮名)が通勤ルートにある大型商業施設の中にできた。
すぐに行って餃子を食べた・・・・・・大きく落胆 (T_T)
今度は自宅の近所に開店した。
すぐに行って餃子を食べた・・・・・・大きく落胆 (T_T)
でも、慣れてくれば焼き手も上手になるだろうと思い何度か訪れたがダメ。
そして昨日、大いなる決意を持って訪問し、餃子定食ダブル(餃子2人前・ミニラーメン・ごはん・小鉢)を注文した。

小皿に唐辛子のないラー油と餃子のタレを入れて待ち、供された餃子定食の餃子を食べた・・・・・・・更なる大きな落胆 (T_T)
もうオレの舌が憶えている
飛車角(仮名)の餃子は食べられないんだろうな。
きっとここの餃子はもう食べることは無い。
年を取ってもココの美味しかった餃子の話をしたいので食べないことに決めた。
ごちそうさまでした <(_ _)>